ニートマスター ジョー 6
『前世診断』
出原(でばら)さん 霊能者?
1 表紙
2
1・2 夜 店の外 野良猫歩く
3・4 店内・カウンター奥の角に小藪
小「マスター、店がつらくても借金はやめとけよ。
後が大変だからね」
ジョ「はい、無いように気をつけます」
5 ジョ「何か苦労がありましたか?」
小「いや、若い頃それでちょっとね」
6 小「お人好しは要らぬ苦労を背負い込むもんだよ」
ジョ「実感こもってますね」
7・8 ボツ入店
ボ「♪ 前前前世で隣組〜だ。
御機嫌うるわしゅう皆の衆笠智衆」
小「さ、静かなひと時はおあずけだ」
3
1 ボ「ちょいと変わったお客さんをお連れしましたよ」
ジョ「変わった客?」
2 ボ「この人ね、出原(でばら)さん。
出っ腹でもゲバラでもないよ」
出「出原です。はじめまして」
3 ボ「この人はね、知る人ぞ知る、
知らない人は知らない・・・・じゃあ普通か」
小「単刀直入で頼むよ」
4 ボ「実は、前世が判るんですよ!」
小「ほう」
5・6 ボ「相手を見ればピタリと当てる、
占い師じゃなくて、いわゆる霊能者ってとこかな。
彼を近所で目撃の発見ですよ。で、ここに偏屈な
オヤジとトッポいマスターがいるから誘ったんよ」
小「ほめてはいないようだな」
小藪の隣にボツ、出原着席
7・8 出「まあ、それで商売してるわけじゃないん
ですけどね。小さい頃から色々見えてはいたんですが、
他の人達と違うと知ってからは内緒のようになりまして」
4
1・2 出「それでも、相談を受けた時に相手の前世が
判れば、問題点や悩みに繋がってることが多くて
解決の糸口になります。何かを恐れるとか嫌うとか、
興味や好みも前世から続いているらしいんです」
3 出「だから今ある一生と前世は別物ではなくて、
繋がっているというのが私の確信です」
ボ「いいねえ、こーいうわけわからん話大好き」
4 出「でも、国や民族や性別、今関わっている
人との関係は以前とは違ったりするようです」
ボ「ん? 今関わっている人って、
前世でも関わっていたってこと?」
5 出「ええ、人との関わりは良くも悪くも前世でも
関わっていた可能性が高いと思います」
小「袖すり合うも他生の縁か・・・・」
6 出「仲の良い友人が前世では親子や兄弟だったとか、
犯罪で加害者と被害者が家族になったりとか」
ボ「うわ〜、それはきついね」
7 出「でも、それも両者が納得して決めるそうなので、
やはりこの世で挑戦して解決を図るということの
ようですね」
ジョ「上級編ですね。以前に(青年と)
話したことがあります」
8 ボ「おや? なんで俗人の一員であろう
マスターが知ってんの?」
ジョ「そういう説があるんですよ。自分でテーマを
決めて、挑戦するために生まれて来ると」
5
1・2 出「そう思います。死んでから大いに不満や
後悔があって再挑戦を繰り返すようです。正々堂々、
充実した人生を送ろうと何十回何百回と」
ボ「がんばるもんだねぇ。
ボクなら納得してやめるかもな」
3 小「敢えて転生をやめたのが釈迦だね。
解脱して成仏したってわけだ」
出「はい、例外として有名ですね」
4 ボ「ほー・・・・てことはもしかして
ボクはお釈迦さんの生まれ変わり・・・・」 うほほ
小「だから、もういないんだってさ」
5 ボ「じゃあ、釈迦以外の歴史上の有名な人物は、
みんな生まれ変わってるのかな」
出「以前に実在したということは、ほぼ例外なく
また生まれ変わったか、生まれ変わると思います」
6 ボ「じゃあ、ボクが歴史上の有名な人物の
生まれ変わりという可能性も?」
出「もちろんあり得ます」
7 ボ「うひょ、それは面白いざんす! 誰がいいかなあ。
信長秀吉家康・・・・謙信に信玄に氏康に真田か長野か・・・・」
小「その時代なら農民じゃねえか?」
8 小「それで足軽か雑兵で、運悪く討ち死にとか」
ボ「ボクの前世まで地味にしないでくれるかな」ぶー
6
1 ボ「ねえねえ、ボクの前世はわかりますか?
ぜひ教えて頂きたい!」
出「そうですねぇ・・・・たしかに戦には
参加したようですね・・・・」ジ〜
2 出「・・・・あー、騎馬武者が見えます」想像図
ボ「おー、いいネいいネ!」
3 出「その武者のずーっと後ろで、
鍬や竹槍を持った集団が歩いています・・・・」想像図
ボ「え?」
4 出「・・・・その一人にボツさんが見えます」想像図
小「俺の予想が当たったな」
5 出「・・・・逃げ遅れて敵に槍で刺されて死んでますね」
想像図
ボ「いやいや、それは遠慮したい!」
6 小「雑兵だっていいじゃねえか、
おめえはそれで鍛えられたんだろうよ」
ボ「武将とか殿様がいいんだよ、誰も好き好んで
雑兵なんかならないでしょ!」
7 ボ「ねえ、もっと前とかあるでしょ? 他にも前世が」
出「え〜その他は・・・・」
8 出「腰に毛皮一枚の姿で、片足に足枷が付いてます
・・・・周りの人達も同じで物を背負って運んでいます」
想像図
小「次は奴隷か・・・・」
7
1 ボ「・・・・あのね、俺は苦労とか不遇とか
不幸は大っ嫌いなんですよ!」
出「と言われても・・・・」
2 出「その前も餓死に過労死と
どれも若死が多いですね・・・・」想像図
ボ「もっといいのはないですか?」ぶぶー
3・4 出「ちょっと待って・・・・あ、砂浜にいます。
南の島かな。寝転んでますね」
想像図
ボ「お、良さそうだね!」
5 出「・・・・あ、だめだ」
ボ「なに?」
6 ボ「敵対する部族に殺されて食われました・・・・」
カウンターから沈むボツ
7 ボ「だいたいね、ボクは南洋とか暑いとこは
嫌いなんですよ、だるくて気が滅入るし」
小「そりゃそうなるよね」
8 ボ「もっとこう、王様とか貴族とかないですか?」
出「・・・・そういえば、宮殿らしき所で
酒を片手に談笑してる姿が見えますね」想像図
8
1 ボ「おー、やっと! いいネいいネ!」
出「でも、その後に革命が起きて・・・・」
首を切る仕草
2 ボ「じゃあ、じゃああれだ、活躍した戦士とか、
騎士とかないですか?」
出「・・・・え〜と・・・・南の国で槍と盾を持って
走っている姿が・・・・」想像図
3 ボ「それ! 俺頑張った? 活躍した?」
出「・・・・殺されて食われたようです」
4 ボツ、カウンターから沈む
小「労多くして功少なしか」
5・6 ボ「む〜残念だ! 出原さんが
ただのサギ師でペテン師だったとは!」
出「いや、嘘を言うつもりはないんですが、
見えてしまったのでどうにもこうにも・・・・」
7 小「出原さんやマスターの解説通りとすれば、
ボツは生まれる前に欲張って上級編を
選んでるんじゃねえのか?」
ボ「まったく記憶にございません!」
8 出「おそらく、それらに懲りて今生では
楽を選んだかもしれませんが、どうですか?」
ボ「そりゃまあ、奴隷や雑兵やら
食われるよりは断然楽だろうけど・・・・ 」
9
1 ボ「じゃあボクは何度も欲張って
難しいゲームに挑んでいたと?」
出「かもしれませんねえ」
2 小「何百年か苦労を重ねて、ようやく欲張る愚を
悟って、出世欲だの野望から解放されたわけか。
どうだい、気が楽になったろ」
ボ「そうだね〜なんて、わかるわけないでしょ!」
3 ボ「欲が無いならプロにもなれないわけだわな」
小「ボツもお人好しだったのかもな・・・・」
4 ボ「ねえ、せっかくだからヤブさんも
見てもらおうよ。出原さん、いいでしょ?」
出「ええ、構いませんが・・・・」
5 小「いや、俺はいいよ、前進あるのみだよ」
ボ「なに言ってんの、たいして先無いんだし、
過去を恐れてはいけませんよ!」
6 席替えで小藪、出原、ボツ
小「では、話のネタに伺いましょうか」
出「そうですね・・・・騎馬武者が浮かびますね」想像図
ボ「戦国武将?」
7 出「激しい戦で討死したようです」想像図
8 ボ「そういえばヤブさんは時代小説とか
書かないんでしょ」
小「うん、昔話は今ひとつでね・・・・
体験によってはイヤになるのかな」
10
1 小「武将に何か特徴はありますか?」
出「ん〜それが、前立ても無い地味な鎧兜なので
・・・・でも、背中に日の丸、日輪ていうのかな、
旗がたなびいています」想像図
2 出「・・・・もっと前はヨーロッパの小さな国の
王様だったようですが・・・・」想像図
3 出「戦争があって滅亡したようです」
ボ「あらま〜それは残念、他には?」ニヤニヤ
4 出「大昔に王の補佐をしていたようですが、
意見の違いから国を追われて行き倒れになっています。
その国も後に滅んだようです」想像図
5 ボ「いや〜、つらい人生だなあ」ニヤニヤニヤ
小「ずいぶん嬉しそうだな」
6 出「なにやら疲労感と無力感と切なさを
感じますね。御自分ではどう思われますか?」
小「言われてみればその通りかな・・・・」
7 ボ「うん、そうか、やっぱりヤブさんは
ボクと同類か・・・・」
出「いや、ところが、ボツさんには
それが感じられなくて・・・・」
8 出「セリフにすると、『あ〜もう面倒くせえ、
ダメだこりゃ、次行ってみよう』という感じで、
良く言えば明るく割り切りがいい。悪く言えば
根気がなくて軽い」
ボ「次行こうって生まれ変わるの?
自殺でもするの?」
11
1 出「途中でくじけて自殺したらゲームオーバー、
またやり直しらしいです」
ボ「ゲ〜、やり直しはきついなあ」
2 出「自殺なんかしなくても、
死ぬときは問答無用で死なせてくれますよ。
事故や病気や犯罪に巻き込まれるとか」
ボ「やっぱりこの世はろくでもないんだな」
3 出「でも、選ぶのは自分とすれば・・・・」
ボ「あの世の俺は欲張りだネ。我ながらバカだねえ」
4 ボ「ま、いいか。マシにはなったらしいし。
ほいじゃあ三度目の正直、マスターを見てもらえますか」
ジョ「え、ボクは無しでいいですよ」
5 ボ「なにビビってんのよ、
せっかくだから見てもらいなよ」
ジョ「つらいのは勘弁してほしいなあ」
6 出「えーとマスターは・・・・」ジー
ボ「マスターは!?」
7 出「ちょっと静かに」
ボ「すんません・・・・」
8 出「あれ?」
ボ「なになに?」
12
1 出「今とまるで変わってないような・・・・
バーのマスターです」
ボ「は?」
2 出「同じような店で同じような格好で・・・・
でも、金髪に青い目です」 想像図
ボ「わお」
3 小「どこの国なんだい?」
出「・・・・アメリカかイギリスかなあ」
4 出「帰るお客さんにグッってやってます」
ボ「あらま」
5 ジョ「最近ですか?」
ボ「もっと前だと思うよ」
6 出「もっといろんな人を知りたい・・・・
好奇心旺盛な人のようですね」
ジョ「じゃあもっと前は?」
7 出「同じ雰囲気のバーで、同じ姿の
銀髪に緑っぽい目です」想像図
ボ「変わってないの?」
8 ボ「なんだよ、西洋かぶれか。
いや、本物の西洋人かよ」
出「いえ、日本もあります・・・・
髪型や着物からすると江戸時代・・・・」
13
1 出「前掛姿の居酒屋の若旦那って感じかな。
店内の座敷でお客にお酒を注いでいます」想像図
2 ボ「一貫してるねぇ」
小「バッカス(酒の神)の化身だったりしてな」
3・4 ジョ「てなわけで、
出原さんはお帰りになりました」
ボ「いや〜、興味津々だったね」
5 小「前世なんか言ったもん勝ちだよな」
ボ「あら、いきなりの掌返し。信じてなかったの?」
6 小「俺も知らない俺のことを
赤の他人が知るわけがない」
ボ「だって、わかるってんだからさあ」
7 小「出原さんと俺では、
どっちがおめえのこと知ってんだ?」
ボ「それはまあ・・・・一応はヤブさんだけどさあ」
8 小「おまえは雑兵だったとしても
討ち死にはしていない」
ボ「なんでわかるの?」
14
1 小「おまえは戦場に行かない。行ってもすぐ逃げる。
餓死も過労死もない。その前に避ける」
ボ「でも昔は飢饉とか、時期によっては
多勢餓死した地域もあったらしいよ」
2 小「江戸時代の飢饉が激しかったのは、
各藩が幕府への負担逃れをするためだろ。
藩だって余裕無いんだからさ」
ボ「飢饉は嘘だっての?」
3 小「嘘ではないが数は別だ。今もそうだろ。
国から補助金取ろうと組織も個人も熱心で、
自称被害者がどっちゃりだよ」
4 小「お、おにぎりが、たた食べたいんだな、
なんて言って寝っ転がっていて、
おむすびがコロリンと転がって来るかい?
必死なら知恵を絞り行動する。
簡単に餓死なんかするもんか。必死ならな」
ボ「でも追い詰められて必死なんて
イヤだなあ」
5・6 小「世間はそれがいやだから真面目に働いてる。
必死にならないために頑張ってるわけだ。
その結果が過労死とは皮肉だがな。
むしろボツは生まれる前に、口減しで
間引きされましたーの方が納得できるね」
ボ「それもいやだな・・・・」
7 小「でもまあ戦国武将は当たってたな。
うちの御先祖だ。まん丸の日輪が家紋だ。
討死はしていないがね。
先祖と前世がごっちゃになったのかな」
ボ「いいなあ。ボクんちは
爺さん婆さんより前はさっぱりだわ」
8 ボ「南の島で食われたってのはありそうだな。
夏の暑さと太陽がまぶしいのはほんとにいやだ。
食ったらうまいだろうし」
15
1・2 ボ「ねえ、ボクらが前世でも関わりが
あるとすると、どこでどう関わったのかな。
聞きそびれちゃったよ」
ジョ「ボクの前世が言われた通りとすれば、
お二人はお客さんだったかもしれませんね」
3・4 ボ「前世でも同じ調子?」
ジョ「あるときは昔のヨーロッパのバー、
あるときは江戸時代の居酒屋ってことで」
5・6 3人、白人風になる想像図
ボ「生まれ変わっても同じってわけか」
7・8 3人、江戸時代の居酒屋の座敷で
町人風ボツ、浪人風小藪、酒を注ぐジョーの想像図
ボ「♪ 前前前世も隣組〜か」
終
隣組
出原(でばら)さん 霊能者?
1 表紙
2
1・2 夜 店の外 野良猫歩く
3・4 店内・カウンター奥の角に小藪
小「マスター、店がつらくても借金はやめとけよ。
後が大変だからね」
ジョ「はい、無いように気をつけます」
5 ジョ「何か苦労がありましたか?」
小「いや、若い頃それでちょっとね」
6 小「お人好しは要らぬ苦労を背負い込むもんだよ」
ジョ「実感こもってますね」
7・8 ボツ入店
ボ「♪ 前前前世で隣組〜だ。
御機嫌うるわしゅう皆の衆笠智衆」
小「さ、静かなひと時はおあずけだ」
3
1 ボ「ちょいと変わったお客さんをお連れしましたよ」
ジョ「変わった客?」
2 ボ「この人ね、出原(でばら)さん。
出っ腹でもゲバラでもないよ」
出「出原です。はじめまして」
3 ボ「この人はね、知る人ぞ知る、
知らない人は知らない・・・・じゃあ普通か」
小「単刀直入で頼むよ」
4 ボ「実は、前世が判るんですよ!」
小「ほう」
5・6 ボ「相手を見ればピタリと当てる、
占い師じゃなくて、いわゆる霊能者ってとこかな。
彼を近所で目撃の発見ですよ。で、ここに偏屈な
オヤジとトッポいマスターがいるから誘ったんよ」
小「ほめてはいないようだな」
小藪の隣にボツ、出原着席
7・8 出「まあ、それで商売してるわけじゃないん
ですけどね。小さい頃から色々見えてはいたんですが、
他の人達と違うと知ってからは内緒のようになりまして」
4
1・2 出「それでも、相談を受けた時に相手の前世が
判れば、問題点や悩みに繋がってることが多くて
解決の糸口になります。何かを恐れるとか嫌うとか、
興味や好みも前世から続いているらしいんです」
3 出「だから今ある一生と前世は別物ではなくて、
繋がっているというのが私の確信です」
ボ「いいねえ、こーいうわけわからん話大好き」
4 出「でも、国や民族や性別、今関わっている
人との関係は以前とは違ったりするようです」
ボ「ん? 今関わっている人って、
前世でも関わっていたってこと?」
5 出「ええ、人との関わりは良くも悪くも前世でも
関わっていた可能性が高いと思います」
小「袖すり合うも他生の縁か・・・・」
6 出「仲の良い友人が前世では親子や兄弟だったとか、
犯罪で加害者と被害者が家族になったりとか」
ボ「うわ〜、それはきついね」
7 出「でも、それも両者が納得して決めるそうなので、
やはりこの世で挑戦して解決を図るということの
ようですね」
ジョ「上級編ですね。以前に(青年と)
話したことがあります」
8 ボ「おや? なんで俗人の一員であろう
マスターが知ってんの?」
ジョ「そういう説があるんですよ。自分でテーマを
決めて、挑戦するために生まれて来ると」
5
1・2 出「そう思います。死んでから大いに不満や
後悔があって再挑戦を繰り返すようです。正々堂々、
充実した人生を送ろうと何十回何百回と」
ボ「がんばるもんだねぇ。
ボクなら納得してやめるかもな」
3 小「敢えて転生をやめたのが釈迦だね。
解脱して成仏したってわけだ」
出「はい、例外として有名ですね」
4 ボ「ほー・・・・てことはもしかして
ボクはお釈迦さんの生まれ変わり・・・・」 うほほ
小「だから、もういないんだってさ」
5 ボ「じゃあ、釈迦以外の歴史上の有名な人物は、
みんな生まれ変わってるのかな」
出「以前に実在したということは、ほぼ例外なく
また生まれ変わったか、生まれ変わると思います」
6 ボ「じゃあ、ボクが歴史上の有名な人物の
生まれ変わりという可能性も?」
出「もちろんあり得ます」
7 ボ「うひょ、それは面白いざんす! 誰がいいかなあ。
信長秀吉家康・・・・謙信に信玄に氏康に真田か長野か・・・・」
小「その時代なら農民じゃねえか?」
8 小「それで足軽か雑兵で、運悪く討ち死にとか」
ボ「ボクの前世まで地味にしないでくれるかな」ぶー
6
1 ボ「ねえねえ、ボクの前世はわかりますか?
ぜひ教えて頂きたい!」
出「そうですねぇ・・・・たしかに戦には
参加したようですね・・・・」ジ〜
2 出「・・・・あー、騎馬武者が見えます」想像図
ボ「おー、いいネいいネ!」
3 出「その武者のずーっと後ろで、
鍬や竹槍を持った集団が歩いています・・・・」想像図
ボ「え?」
4 出「・・・・その一人にボツさんが見えます」想像図
小「俺の予想が当たったな」
5 出「・・・・逃げ遅れて敵に槍で刺されて死んでますね」
想像図
ボ「いやいや、それは遠慮したい!」
6 小「雑兵だっていいじゃねえか、
おめえはそれで鍛えられたんだろうよ」
ボ「武将とか殿様がいいんだよ、誰も好き好んで
雑兵なんかならないでしょ!」
7 ボ「ねえ、もっと前とかあるでしょ? 他にも前世が」
出「え〜その他は・・・・」
8 出「腰に毛皮一枚の姿で、片足に足枷が付いてます
・・・・周りの人達も同じで物を背負って運んでいます」
想像図
小「次は奴隷か・・・・」
7
1 ボ「・・・・あのね、俺は苦労とか不遇とか
不幸は大っ嫌いなんですよ!」
出「と言われても・・・・」
2 出「その前も餓死に過労死と
どれも若死が多いですね・・・・」想像図
ボ「もっといいのはないですか?」ぶぶー
3・4 出「ちょっと待って・・・・あ、砂浜にいます。
南の島かな。寝転んでますね」
想像図
ボ「お、良さそうだね!」
5 出「・・・・あ、だめだ」
ボ「なに?」
6 ボ「敵対する部族に殺されて食われました・・・・」
カウンターから沈むボツ
7 ボ「だいたいね、ボクは南洋とか暑いとこは
嫌いなんですよ、だるくて気が滅入るし」
小「そりゃそうなるよね」
8 ボ「もっとこう、王様とか貴族とかないですか?」
出「・・・・そういえば、宮殿らしき所で
酒を片手に談笑してる姿が見えますね」想像図
8
1 ボ「おー、やっと! いいネいいネ!」
出「でも、その後に革命が起きて・・・・」
首を切る仕草
2 ボ「じゃあ、じゃああれだ、活躍した戦士とか、
騎士とかないですか?」
出「・・・・え〜と・・・・南の国で槍と盾を持って
走っている姿が・・・・」想像図
3 ボ「それ! 俺頑張った? 活躍した?」
出「・・・・殺されて食われたようです」
4 ボツ、カウンターから沈む
小「労多くして功少なしか」
5・6 ボ「む〜残念だ! 出原さんが
ただのサギ師でペテン師だったとは!」
出「いや、嘘を言うつもりはないんですが、
見えてしまったのでどうにもこうにも・・・・」
7 小「出原さんやマスターの解説通りとすれば、
ボツは生まれる前に欲張って上級編を
選んでるんじゃねえのか?」
ボ「まったく記憶にございません!」
8 出「おそらく、それらに懲りて今生では
楽を選んだかもしれませんが、どうですか?」
ボ「そりゃまあ、奴隷や雑兵やら
食われるよりは断然楽だろうけど・・・・ 」
9
1 ボ「じゃあボクは何度も欲張って
難しいゲームに挑んでいたと?」
出「かもしれませんねえ」
2 小「何百年か苦労を重ねて、ようやく欲張る愚を
悟って、出世欲だの野望から解放されたわけか。
どうだい、気が楽になったろ」
ボ「そうだね〜なんて、わかるわけないでしょ!」
3 ボ「欲が無いならプロにもなれないわけだわな」
小「ボツもお人好しだったのかもな・・・・」
4 ボ「ねえ、せっかくだからヤブさんも
見てもらおうよ。出原さん、いいでしょ?」
出「ええ、構いませんが・・・・」
5 小「いや、俺はいいよ、前進あるのみだよ」
ボ「なに言ってんの、たいして先無いんだし、
過去を恐れてはいけませんよ!」
6 席替えで小藪、出原、ボツ
小「では、話のネタに伺いましょうか」
出「そうですね・・・・騎馬武者が浮かびますね」想像図
ボ「戦国武将?」
7 出「激しい戦で討死したようです」想像図
8 ボ「そういえばヤブさんは時代小説とか
書かないんでしょ」
小「うん、昔話は今ひとつでね・・・・
体験によってはイヤになるのかな」
10
1 小「武将に何か特徴はありますか?」
出「ん〜それが、前立ても無い地味な鎧兜なので
・・・・でも、背中に日の丸、日輪ていうのかな、
旗がたなびいています」想像図
2 出「・・・・もっと前はヨーロッパの小さな国の
王様だったようですが・・・・」想像図
3 出「戦争があって滅亡したようです」
ボ「あらま〜それは残念、他には?」ニヤニヤ
4 出「大昔に王の補佐をしていたようですが、
意見の違いから国を追われて行き倒れになっています。
その国も後に滅んだようです」想像図
5 ボ「いや〜、つらい人生だなあ」ニヤニヤニヤ
小「ずいぶん嬉しそうだな」
6 出「なにやら疲労感と無力感と切なさを
感じますね。御自分ではどう思われますか?」
小「言われてみればその通りかな・・・・」
7 ボ「うん、そうか、やっぱりヤブさんは
ボクと同類か・・・・」
出「いや、ところが、ボツさんには
それが感じられなくて・・・・」
8 出「セリフにすると、『あ〜もう面倒くせえ、
ダメだこりゃ、次行ってみよう』という感じで、
良く言えば明るく割り切りがいい。悪く言えば
根気がなくて軽い」
ボ「次行こうって生まれ変わるの?
自殺でもするの?」
11
1 出「途中でくじけて自殺したらゲームオーバー、
またやり直しらしいです」
ボ「ゲ〜、やり直しはきついなあ」
2 出「自殺なんかしなくても、
死ぬときは問答無用で死なせてくれますよ。
事故や病気や犯罪に巻き込まれるとか」
ボ「やっぱりこの世はろくでもないんだな」
3 出「でも、選ぶのは自分とすれば・・・・」
ボ「あの世の俺は欲張りだネ。我ながらバカだねえ」
4 ボ「ま、いいか。マシにはなったらしいし。
ほいじゃあ三度目の正直、マスターを見てもらえますか」
ジョ「え、ボクは無しでいいですよ」
5 ボ「なにビビってんのよ、
せっかくだから見てもらいなよ」
ジョ「つらいのは勘弁してほしいなあ」
6 出「えーとマスターは・・・・」ジー
ボ「マスターは!?」
7 出「ちょっと静かに」
ボ「すんません・・・・」
8 出「あれ?」
ボ「なになに?」
12
1 出「今とまるで変わってないような・・・・
バーのマスターです」
ボ「は?」
2 出「同じような店で同じような格好で・・・・
でも、金髪に青い目です」 想像図
ボ「わお」
3 小「どこの国なんだい?」
出「・・・・アメリカかイギリスかなあ」
4 出「帰るお客さんにグッってやってます」
ボ「あらま」
5 ジョ「最近ですか?」
ボ「もっと前だと思うよ」
6 出「もっといろんな人を知りたい・・・・
好奇心旺盛な人のようですね」
ジョ「じゃあもっと前は?」
7 出「同じ雰囲気のバーで、同じ姿の
銀髪に緑っぽい目です」想像図
ボ「変わってないの?」
8 ボ「なんだよ、西洋かぶれか。
いや、本物の西洋人かよ」
出「いえ、日本もあります・・・・
髪型や着物からすると江戸時代・・・・」
13
1 出「前掛姿の居酒屋の若旦那って感じかな。
店内の座敷でお客にお酒を注いでいます」想像図
2 ボ「一貫してるねぇ」
小「バッカス(酒の神)の化身だったりしてな」
3・4 ジョ「てなわけで、
出原さんはお帰りになりました」
ボ「いや〜、興味津々だったね」
5 小「前世なんか言ったもん勝ちだよな」
ボ「あら、いきなりの掌返し。信じてなかったの?」
6 小「俺も知らない俺のことを
赤の他人が知るわけがない」
ボ「だって、わかるってんだからさあ」
7 小「出原さんと俺では、
どっちがおめえのこと知ってんだ?」
ボ「それはまあ・・・・一応はヤブさんだけどさあ」
8 小「おまえは雑兵だったとしても
討ち死にはしていない」
ボ「なんでわかるの?」
14
1 小「おまえは戦場に行かない。行ってもすぐ逃げる。
餓死も過労死もない。その前に避ける」
ボ「でも昔は飢饉とか、時期によっては
多勢餓死した地域もあったらしいよ」
2 小「江戸時代の飢饉が激しかったのは、
各藩が幕府への負担逃れをするためだろ。
藩だって余裕無いんだからさ」
ボ「飢饉は嘘だっての?」
3 小「嘘ではないが数は別だ。今もそうだろ。
国から補助金取ろうと組織も個人も熱心で、
自称被害者がどっちゃりだよ」
4 小「お、おにぎりが、たた食べたいんだな、
なんて言って寝っ転がっていて、
おむすびがコロリンと転がって来るかい?
必死なら知恵を絞り行動する。
簡単に餓死なんかするもんか。必死ならな」
ボ「でも追い詰められて必死なんて
イヤだなあ」
5・6 小「世間はそれがいやだから真面目に働いてる。
必死にならないために頑張ってるわけだ。
その結果が過労死とは皮肉だがな。
むしろボツは生まれる前に、口減しで
間引きされましたーの方が納得できるね」
ボ「それもいやだな・・・・」
7 小「でもまあ戦国武将は当たってたな。
うちの御先祖だ。まん丸の日輪が家紋だ。
討死はしていないがね。
先祖と前世がごっちゃになったのかな」
ボ「いいなあ。ボクんちは
爺さん婆さんより前はさっぱりだわ」
8 ボ「南の島で食われたってのはありそうだな。
夏の暑さと太陽がまぶしいのはほんとにいやだ。
食ったらうまいだろうし」
15
1・2 ボ「ねえ、ボクらが前世でも関わりが
あるとすると、どこでどう関わったのかな。
聞きそびれちゃったよ」
ジョ「ボクの前世が言われた通りとすれば、
お二人はお客さんだったかもしれませんね」
3・4 ボ「前世でも同じ調子?」
ジョ「あるときは昔のヨーロッパのバー、
あるときは江戸時代の居酒屋ってことで」
5・6 3人、白人風になる想像図
ボ「生まれ変わっても同じってわけか」
7・8 3人、江戸時代の居酒屋の座敷で
町人風ボツ、浪人風小藪、酒を注ぐジョーの想像図
ボ「♪ 前前前世も隣組〜か」
終
隣組
by buttonde
| 2016-10-21 15:21
| 他
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