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風流荘風雅屋

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お上品を目指す、のんき節

ニートマスター ジョー 9

『真夜中のガッツポーズ』
ニートマスター ジョー 9_c0072801_424345.jpg
青年C

青年B

 表紙

1・2 夜 二階建て一戸建全景 二階窓に明かり
3・4・5・6
 二階室内俯瞰 机に向かっている青年Bの後姿
7 青年B、ノートパソコンに打込中
 カチャカチャ
8 パソコン画面

1 パソコン画面の文字
 「330 名前:名無しの水兵さん [sage] 投稿日:20
 俺はいわゆるニートでひきこもりだ。
 毎日何するでもなく部屋でゴロゴロしているが、
 真夜中になると部屋で一人、ガッツポーズをとる。| 」
 カチャカチャ
2「それは、この世に生きるすべての者たちへの
 俺の存在表明であり、俺からの挑戦状だ。| 」
 カチャカチャ
3「世界では日々多くの者が死んで行く。
 事故や病気、犯罪や戦争による犠牲者だ。| 」
 カチャカチャ
4「今日死んでいった奴らへの勝利宣言と、
 まだ死んでいない奴らへの宣戦布告の意味を込めて、
 若輩ひきこもりの俺がガッツポーズを決めるのだ。| 」
 カチャカチャ
5 青年B、立ち上がり、
6 ビシッと両腕を上げ、
7・8 部屋の真ん中でガッツポーズの後姿。




1・2 夜 店外
  ボ「なんだか元気があるんだか無いんだか」
3・4 店内
  ボ「ニートだの無職だの引きこもりなんてーと
 親近感が湧くけど、妙にプライド高かったり
 強気だと共感なくなっちゃうんよネ」
  ジョ「誰かお知り合いでも?」
5 ボ「これ」
  ボツ、ジョーに iPhone 渡す。
  ジョ「お、これは!」
6 ジョ「ボツさんが iPhone 持ってるなんて!」
  ボ「そっちじゃなくて、 中身、書き込みだよ」
7 ジョ「『俺はいわゆるニートでひきこもりだ。
 毎日何するでもなく部屋でゴロゴロ・・・・』
 何ですかこれ」
  ボ「ネット見てたらみつけたんよ。
 名無しの名文として出回ってるらしいよ」
8 ボ「毎日生きるの死ぬの勝ちだ負けだと
 疲れそうだよね。病気になったら悔しがるのかねえ」
  ジョ「不安が消せないんでしょうね」

1 ジョ「ニートや引きこもりは
 不安が付きものですからね。ボツさんはいい意味で
 鈍感かもしれませんね」
  ボ「鈍感と言われて嬉しい奴はいないでしょ」ぶー
2 ジョ「惑わされない、動じない、
 気にしないというのは強いですよ」
  ボ「ほ〜、まるで自分は違うとでも言いたそうな」
3・4 ジョ「ボクだって心配事はありますよ。
 店の売り上げも気になるし」
  青年B入店
5 ジョ「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
  青年B、ドア側に着席。
6 青年B「ジントニック」
  ジョ「かしこまりました」
7 ジョ「ジンはゴードン、ビーフィーター、
 タンカレー、ボンベイサファイアとありますが、
 御希望のものはありますか?」
  四種の瓶を並べる。
  青年B「いや、任せます」
8 ジョ「では、当店定番のタンカレーを
 使わせて頂きます」

1 ジョーとボツのやり取りの様子
  青年B(店主はまだ若い奴だ。ジン選びに
 迷ったくらいだから新米だな)
2 青年B(客は一人、ハゲかけのヘラヘラした
 間抜けヅラの、若いんだかオヤジなんだか、
 勤め人か学生か、金持ちか貧乏人か・・・・
 まあ貧乏人だろう)
  ボツのにんまり顔
3・4 青年「こんばんは〜」
  ボ「おー、勤労青年」
  ジョ「いらっしゃいませ」
5 ボ「過労死したのかと思ったよ」
  青年「その前になんとか逃げますよ」
  ボツの右隣へ着席
6 青年「人手不足で休日返上になったりで
 さすがにうんざりですよ」ため息
  ボ「頼られてんだネ」
7 青年「え〜と・・・・アプリコットフィズを」
  青年B(二人目の客も一見冴えない
 若い奴だ。バイト暮らしでもしてるのか、
 これまた貧乏人だな)
8 青年B(俺は酒はさっぱりわからんが、
 何事にも見る目はある。いい店構えだが、
 いかに店側が気取ったところで、
 客層でその店の程度がわかるってもんだ)

1 青年B(場所柄からして、そう金持ちも著名人も
 寄るような店ではないことはわかっているが、
 貧相な客ばかりだとこっちまで同類かと不愉快になる。
 珍しくバーに来たというのに)
2 青年C入店
  青年C「こんばんは〜」
3・4 ボ「おー、画伯! ごぶさた」
  ジョ「いらっしゃいませ」
5 青年の右隣着席
  青年C「オレンジジュースある?」
  ジョ「もちろん、御用意します」
6 ボ「マスター、絵の代金は?」
  ジョ「まだ何ヶ月分も・・・・」
  青年Cにジュースを出す。
7 青年C「タダっていいよね〜」
  青年「タダ・・・・かな?」
8 ボ「画伯、最近は絵はどうしてんの?」
  青年C「大きな絵描いてるよ。
 (後ろの絵指差して)これと同じくらい」

1 ニコニコ話す青年C
  青年B(三人目の客もまた見事な間抜けヅラで、
 とても利口とは思えない奴だ)
2 青年B、iPhone に書き込み
  青年B(社会的下層やら弱者だろう連中が店に集って
 傷を舐め合い馴れ合う様子は、見ていて不愉快だ)
3 ジョ「おかわりお作りしましょうか?」
  グラスにはあと少しだけ
  青年B「え? あー、じゃあ・・・・」
4 青年B(くそ、二杯目は別のものにしようと
 思ってたのに、しゃしゃり出やがって、
 これだから新米は・・・・)
5 ジョ「どうぞ」
6 青年B、一口、
7 青年B(あれ?)
8 青年B(・・・・ なんだか濃くなってるような
 ・・・・あいつ、分量間違えたのか。適当か?)
9 青年B(・・・・まさか初めての客を
 バカにしてんのか?)

1 青年B(未熟そうな若造店主に苛立ちは
 あったが、俺は平静を保った)
  グイと飲み干す
2 青年B(ダメな店だとしても、
 選んだ俺の不覚もある。久々のバーでもあるし、
 ここは一つ遠慮なく酔うことにした)
  青年B「メーカーズマークをロックで・・・・」
  ジョ「かしこまりました」
3 ジョ「メーカーズマーク、ロックです」
  グラスには丸い氷、傍らにチェイサー、
  メーカーズマークの瓶
4 ジョ「おつまみも各種ありますので御注文下さい」
  メニューを置く
5 青年B、メニューを見ながら、
  青年B(ずいぶん品数が多いな。
 つまみで稼ごうってんだな。そうは行かねえぞ)
6 小藪入店
  小「よ」
7・8 小「よう、賑やかそうだね」
  ボ「お、ヤブさん登場」
  ジョ「いらっしゃいませ」
10
1 小藪、奥の角へ着席
  ボ「しばらく来なかった?」
  小「うん、私用があってしようがないんだ。
 いつものね」
2 小「お二人は順調かね」
  青年「はい、年末のせいかせわしいですけど」
  青年C「いつもとおんなじ〜」
3 小藪の語らう様子
  青年B(奥に座ったのはオヤジかジジイか
 わからないが、気難しそうなツラで三つ揃えで
 葉巻の気取った奴だ。経営者かヤクザもんか
 判別できないが、いかにも常連風だな)
4 青年B(おっと、空になっちまった)
5 青年B「マスター、おかわり」
  ジョ「はい」
6 ジョ「他のものにしますか?」
  青年B「いや、お か わ り で」
7 ジョ「はい、申し訳ありません」
  青年B、iPhone を見ている
8 青年Bが店を出る
  ジョ「ありがとうございました」
11
1 青年B、階段でよろけて、
  青年B「おわっ!」
2 青年B、階段で尻餅
  青年B「くそっ、なんで階段なんだよ!」ちぇっ
3 青年B「たった四杯ですっかり酔っちまったぜ」
  よろけつつ歩いて行く青年B。
4・5 店内
  小「マスター、無愛想な客もこなしてるよな」
  ジョ「いえ、ずっと iPhone を見ていたので
 声掛けにくくて・・・・」
6 ボ「そういや、あの客にはジンの種類
 聞いてたけど、ボクには聞いたことないね」
  ジョ「こだわらない人には聞きません」
7 ボ「おやや? なんでわかるのよ」
  ジョ「ボツさんはこれまで何度もジンフィズや
 他のジンベースを注文されましたが、
 ジントニックは一度もありません」
8 ジョ「つまり、ジンへのこだわりよりも
 飲みやすさを優先した。でしょ?」
  ボ「ほう、ジントニック以外を注文する客は
 こだわりが無いと?」ジロリ
9 ボ「まあね、ボクについては当たりネ。
 すっきりだけでは物足りなくてネ」
  ジョ「よかった」グッ
12
1 ボ「さすがプロというべきか、
 さりげなくおかわりを聞いてるとこなんかも
 プロだよネ〜」
  ジョ「お客さんに無関心てわけにいかないので」
2 ジョ「評価は嬉しいんですが、
 お代は普通に頂きますよ」
  ボ「そうかあ。じゃあほめるのやーめた」
3 ジョ「ジンフィズ、おかわりは?」
  ボ「では頂きましょう」
4 ジョ「はいどうぞ」
  ボ「はいどうも」
5 ボ「?」
6 ボ「ちょっと濃くなってる?」
  ジョ「わかりました?」
7 ジョ「汗をかく夏は特にそうなんですが、
 一杯目は軽くさっぱり飲みやすく、二杯目は少し
 アルコールを増やして、ゆっくり目に
 飲んでもらうということで」
  ボ「敢えて濃さを変えるの? へ〜」
8 ジョ「それで全体的に軽めにしてあります。
 何杯飲むのもお客さんの自由、とはいっても
 やっぱり体に負担がかかりますから」
  小「そういえば、戦国時代の話にあるね。
 出すお茶を変えた話」
13
1・2 小「豊臣秀吉がまだ信長の家臣で、
 長浜城城主だった頃に領内で鷹狩りをして、
 その帰りに寺に寄ってお茶をもらうことにしたと」
3 小「で、出迎えた寺の小僧がぬる目の茶を茶碗に
 入れて差し出すと、喉が渇いていた秀吉は一気に
 飲み干して、おかわりを頼んだ」
4 小「すると小僧は、今度は小さめの椀に
 熱めの茶を入れて差し出した」
5 小「一息入れて落ち着いてきた秀吉は、
 その気遣いに感心して、ゆっくり飲むと
 また一杯頼んでみた」
6 小「すると今度は小さな椀に熱い茶を差し出したと」
7・8 小「まだ子供なのに見事な気働きであると
 秀吉から大層感心されたその小僧こそ、
 その後に天下の豊臣家を支える、
 五奉行筆頭の石田三成公であったとさ」
  ボ「マスターが三成公のような判断が
 あったとは驚いたネ」
14
1・2 ジョ「以前通っていたバーのマスターが
 教えてくれたんです。季節やお客さんの
 体調や好みとか、食後か食前かで
 出すものが変わるし、調整する必要があると」
  小「マスターも師匠がいたか」
3・4 ボ「まったくのド素人だったのに
 様になってくるもんだネ」
  小「実践で鍛えられたようだね」
  ジョ「恐れ入ります」
5 ボ「ねえ、ここの年末年始の予定は?
  ジョ「はい、一応30日から4日まで
 お休みを頂こうかと」
6 ボ「で、クリスマスは?」
  ジョ「え?」
7 青年「クリスマスはきのうだよ」
  ボ「え?」
8 ボ「・・・・きのうは寝てたなあ」
  小「ま、俺らにゃ関係ねえわな」
9 ボ「おはようからおやすみまで
 暮らしを続けてライネンです」
  ジョ「最近はライオンの
 キャッチフレーズも変わったらしいですよ」
15
1 夜の路上、青年Bが歩く
  青年B(誰もいない夜の街を歩くと、
 この世で自分が選ばれていることを実感する)
2 青年B(下層でも弱者でもない俺が
 路上で勝利のガッツポーズを決めてやろう)
3・4 青年Bの前に車迫る
  青年B「!!」
5・6 車走り去り、倒れている青年B
  青年B(・・・・負けた・・・・?)
7・8 店内
  ボ「今回を忘年会としますか。
 みなさんお疲れ様でした〜」
  青年C「ぼくは疲れてないけど」
                  終

Panther- Marcus Miller, Lee Ritenour, George Duke

Bob James Trio - MIND GAMES (Live)


2017年01月25日
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ニートマスター ジョー 9_c0072801_1201586.png
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by buttonde | 2016-12-26 05:20 | | Trackback | Comments(0)

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